【おかしな常識】民間企業から転職して衝撃を受けた公務員の海外出張 

仕事内容
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私は民間企業から地方公務員に転職して、何度か海外出張を経験しました。

また、公務員として海外派遣されていたときにも、他の自治体の海外出張のお世話をしたこともあります。

この記事では、民間企業出身の私が、地方公務員の海外出張で驚いたことを紹介します。

なお、今回は自治体の首長や議員が海外出張するケースについてです(担当者だけの出張のケースではありません)。

また、あくまで私が勤めている自治体の話であり、他では当てはまらないこともあるため、その点はご了承ください。

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「仕事してる感」を出すためにスケジュール組みに必死

まず公務員の海外出張でよくあるのは、「姉妹都市○○周年記念」などの記念事業で、海外の姉妹都市先を訪問するケースです。

その場合、「姉妹都市協定の覚書の更新」といった目的で、海外出張を組みます。

皆さんも、知事や市長が海外の方とサインした紙を持ちながら笑顔で映っている写真を見たことがあるかもしれません。

その覚書への調印ですが、実際には知事や市長同士が少し会話して、サインするだけで終わるため、実際の業務としては1時間もあれば終了してしまいます。

しかし1時間のために海外出張することは世間的にも許されないので、とにかく色んな予定を入れるよう調整に全力を注ぎます。

まずは姉妹都市先の担当者に相談して、その自治体の事業の説明を受けたり、施設を見学させてくれないかを必死で頼みます。

もしそれで十分なスケジュールが組めなければ、現地にある日本の在外公館(大使館や総領事館など)に連絡して、そこに表敬訪問の依頼をしたり、夕食会をお願いしたりもします。

それ以外にも、JETRO(日本貿易振興機構、経産省所管)JNTO(日本政府観光局、国土交通省所管)といった日本の政府系組織が現地にあれば、そこに現地事情のプレゼンをお願いしたりもします。

海外のJETROやJNTOはそうした案件は年に何度も対応するそうで、自治体や議員の依頼となると基本的に断ることはできません。

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“視察”という名の観光

上記を調整してもまだスケジュールが埋まらなければ、”現地視察”を入れまくります。

例えば、現地の自治体が運営している博物館や美術館などの公共施設は定番です。

それ以外にも“市場調査”という名目で地元の市場に行くこともあります。

現地の食品や特産品の価格を調査するという名目ですが、細かく調べるようなことはせず、実際はお土産を買ったり食べ歩きしたりがほとんどです。

また海外の観光政策の視察と言う名目で、現地のメジャーな観光名所に行くことも珍しくありません。

動物園やランドマークの訪問など、傍から見るとただの観光ですが、出張後の報告書には「当市の観光政策の参考とすべく、海外における観光取組を視察した」と記載して、いかにも現地で学んできたことをアピールします。

2023年に自民党女性局議員のパリ視察が問題になりましたが、地方自治体や議員の出張でも同じことが行われています。

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相手先訪問のために過剰な準備が必要

自治体の首長や議員が海外の団体を訪問する場合、異常なまでの準備を行います。

例えば、訪問先でどういう順番で挨拶して、記念品交換をするかをまとめ“次第”や、面会するときの“配席”を作りこみます。

そして首長や議員のために、面会相手がどんな相手かを把握するために、”略歴”準備します。

もし相手の略歴がWEBで検索しても出てこない場合は、相手に提出を求めます。

 

私が海外派遣中に、そうした調整を担当しましたが、海外の団体は面会するにあたって日本の自治体ほど準備はしません。

次第も準備せず、「そんなことわざわざ決めておく必要がある?」という反応をされます。

まして配席を気にするのは日本側だけで、「どこに座っても一緒でしょ?」という感覚です。

そのため、配席決めのために面会する会議室のレイアウトを送ってもらうように伝えても、ろくに相手をしてくれないこともほとんどです。

それでも日本の自治体の職員としては、首長や議員のためにそうした資料を準備するのが当たり前になっているので、訪問直前まで食い下がってでも相手にお願いし続けます。

 

ただ、そんな周到な準備を行っても、実際の面会では、首長や議員が原稿通りの挨拶をして、大して盛り上がらずに終わることも多いです。

相手からしても、「こんなに面倒くさい準備に付き合わされたのに」と思っていることでしょう。

日本の自治体は概ねこうしたやり方を貫いているので、おそらく海外からは悪いイメージを持たれていると思います。

修学旅行のような“旅のしおり”を作成

前述のような入念な準備を行ったら、出発前に全ての資料を束ねた“旅のしおり”を作成します。

まさに学校の修学旅行の前に生徒に配布されるようなもので、日本出発から帰国までのスケジュール表から、それぞれの訪問先の次第・配席・面会者の略歴などの資料も含まれます。

もし訪問直前に相手側の出席者変更や時間変更があると、資料を差し替えます。

そのため、出発直前に何度も資料が入れ替わることもあります。

紙がもったいないので少しの変更くらいで資料を差し替える必要はないと思いますが、公務員の世界では資料の間違いは許されないのです。

 

”旅のしおり”ですが、スケジュールの他にも、現地の気候や当日の天気予報、好ましい服装なども資料にまとめることもあります。

例えば、「現地の気温は〇℃を下回るので、厚手のコートを用意した方が良い」などです。

今の時代、現地の気候や天気予報なんてスマホですぐ調べられるのみ、そこまでする意味は疑問です。

また、天気予報は訪問前に変わったりすると、わざわざ修正して印刷しなおすこともあります。

それこそスマホで調べればもっと最新の情報を得られるのにです。

 

自治体の同行職員も5つ星ホテルに泊まる

首長や議員は、海外出張時に5つ星ホテルに宿泊します。

私の自治体では、それに合わせて自治体の同行職員も5つ星ホテルに宿泊します。

ただその場合、規定されている宿泊費の上限を超えてしまい、職員の手出しが発生してしまうので、宿泊費の「増額調整」という申請を行って自腹を回避します。

その申請に記す理由については、「首長や議員の移動の際にスムーズに案内するため」や「何か問題が起きた際に迅速に対応するため」といった理由を並べます。

近くにホテルがそこしかないのであれば仕方ないですが、もし徒歩5分以内に安価なホテルが存在していたとしても、それは見つけられなかったことにします。

課長などの高い役職者ならまだマシかと思いますが、平の職員も同じようにします。

酷いときは、職員10人くらいが5つ星ホテルに泊まることもありました。

海外出張に旅行会社も同行させる

地方自治体の首長や議員が出張するときは、日本の旅行会社に委託してチケットの発券や現地ガイドの手配を行ってもらいます。

旅行会社を選定した上で、その旅行会社にパスポート情報を提供して、チケットや保険の加入を行ってもらいます。

また現地の日本語ができるガイドや、空港からの移動車両、食事の場所なども準備してもらいます。

そして出発の際には、日本の空港から旅行会社の添乗員が帰りの空港まで付き添ってくれます。

私が民間企業で働いていたときは、チケットの発券から現地での移動までの全てを自分で対応していたので、その違いには驚かされます。

 

出発する日本の空港では、旅行会社の社員が待ち構えていて、首長や議員が到着したら搭乗手続きを行うカウンターまで案内し、荷物の受け渡しなどもお手伝いを行います。

年長の議員がスーツケースを転がしていたら、すかさず旅行会社のスタッフが代わりに持って、カウンターに預けたりもします。

議員から「乗り換えあるけど荷物は最終到着地で受け取りなの?」「ラウンジは入れるの?」といった質問にもすぐさま答えなければなりません。

一番大事なのは子供のような議員のお世話

海外出張で何より大変なのは議員のお世話です。

海外にて、特に旅行会社の添乗員は雑用係のように扱われます。

例えば会食中にこっちに来いという手振りで「おーい」と声をかけ、「ティッシュちょうだい」「おしぼりは?」「爪楊枝」と旅行会社に注文する議員もいます。

旅行会社だけでなく、自治体の職員もこき使われたり、お叱りを受けることもあります。

私が対応した出張では、議員の顔を覚えていない職員がいて、擦れ違った際に挨拶を忘れたらしく、課長が議員から「挨拶してこない職員がいるぞ」と叱られていました。(15名近く議員が参加していたので覚えていない人もいそうですが…)

また私の体験ですが、大勢での夕食会のために貸切バスで移動して会場に入った際に、議員への指定席の案内が遅れてしまい、議員がどの席に座ったらよいか戸惑うことがありました。

そのときは、再び課長が議員から「職員の案内が遅すぎる」と叱られたそうです。

しかし貸切バスから降りるときに、議員より先に職員が下りることは許されていないので、以降のスケジュールでは、わざわざ職員数名が別の車両で事前に会場入りして、議員が到着したらすぐに席へ案内するような段取りにしました。

その分、移動費用や労力がかかっており、それが本当に必要なのかは疑問でしかありません。

 

前入りということで言えば、宿泊先のホテルから移動する際も、職員は少なくとも30分前にロビーに集まります。

そんな一方で、年長の議員が現れるのは予定時間ちょうどか、遅れてくる人もいます。

他にも、ホテルで朝食をとる際も、議員のために30分前に朝食会場に行って、場所取りをします。

いくらガラガラな朝食会場でも、毎日、30分前に場所取りをします。

 

また議員によっては現地で予定を変えて、急に離団して別行動をとる人もいます。

その人が次の訪問先で挨拶を行う場合などは、急いで代理を充てる必要があるため、職員が他の議員に頭を下げて代理をお願いしたりします。

このように、自治体職員は海外でも議員を神様のように扱う必要があるのです。

肝心の現地業務は“そつなくスケジュールを回すこと”

自治体職員の現地でのメイン業務は、いかにそつなくスケジュールを回すかです。

前述のとおり、職員何名かで訪問先に先入りして、会場のチェックと動線の確認などを入念に行います。

そして訪問の際には、車両から会場までをスムーズに案内します。

訪問先で面会が始まると、首長が事前に準備された挨拶原稿を読み、議会の代表も同じように挨拶をし、相手方と歓談を行うといった形で、準備したシナリオどおりに事が進みます。

基本的に事前にシナリオが決まっているので、イレギュラーなことは起きません。

それが終わったら、帰国後の報告書に載せるために、集合写真を撮ります。

スーツを着た首長と議員が、同じく正装をした海外の方と並んで写真を取れば、いかに内容が無い面談だったとしても、海外でしっかり仕事をした感が出ます。

 

私が民間企業に勤めていたときは、海外でお客さんへのプレゼンや価格交渉をしたり、品質問題の改善提案などを行い、その場その場でお客さんの反応は違ったので、予想外のことが起こるのが当たり前でした。

そう考えると、公務員の海外出張の中身はすべてが予定調和であり、中身がほぼ無いように感じられます。

おわりに

以上が民間企業出身の私が衝撃を受けた、公務員の海外出張の常識です。

公務員は海外出張のために必死で準備をしますが、その方向性が間違っていることが多いと感じます。

それは、不必要な”旅のしおり”の作成であったり、訪問相手が迷惑になるような周到な準備などです。

そこまで頑張るにも関わらず、面会の中身としてはただの挨拶だけで終わって、次に繋がるような具体的な話をしないことも多くあります。

民間企業では、お金のかかる海外出張をし、次に繋がる話を持って帰らずに帰ってくるのは有り得ないことです。

 

また、平の職員が当たり前のように5つ星ホテルに泊まることや、”視察”と称してただの観光名所巡りを行っているのもおかしいです。

私が派遣されていた海外の国では、国民が例え地方自治体であろうと行政機関をしっかりウォッチしていることもあり、首長や議員の海外出張は本当に意味があるとき以外は許されていなかったです。

日本では一時的に議員の海外での観光出張が話題になることがありますが、それも一時的に炎上するだけで、それ以降は忘れられの繰り返しです。

この原因は、日本人の政治への興味の無さであり、とりわけ地方自治体への興味の無さゆえだと思います。

 

ぜひこれをきっかけに、地方自治体で行われている海外事業や、海外出張に興味を持っていただき、皆さんの税金が無駄に使われていないかを知っていただきたいと思います。

 

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